ある研究者の手記

セキュリティとかゲームとかプログラミングとかそのへん

コンピューターセキュリティシンポジウム2015に参加してきました

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情報処理学会 コンピューターセキュリティシンポジウム(CSS)2015@長崎に参加してきました。ちゃんぽん美味しかったです。

より実践的になっている学会

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実学的な発表が多くなってきている印象でした。CSSにはマルウェア対策研究人材育成ワークショップという発表枠が含まれているのですが、ここで発表されているネットワーク侵入検知や防御、マルウェア分析などは他のコンピュータ科学の研究とくらべてもとくに実践的な内容になっていると思います。マルウェア対策技術というのは、攻撃者側のマルウェアや攻撃手法の変化が非常に早く、自分も昔指導教員に「マルウェア関連の研究で5年前というのは石器時代」と言われたことがあります。そのため研究でも数年後に芽がでるようなものではなく「今」「役立つ技術」というものが求められていると思います。

今回もそうですが、このマルウェア対策研究人材育成ワークショップ(MWS)というのは大学や企業の研究所だけでなく、セキュリティをサービスとして売っているような会社やそれこそアンチウィルスベンダの方も参加されており、こうやってデータ収集してみた、みたいな内容も多く発表されています。これはこのワークショップが始まってから徐々に広まってきた流れであり、それ以前のCSSにはなかった流れだったと記憶しています。ワークショップの委員の方もこういった実践に沿った研究活動を広めてほしいという願いがあったようで、それが形になってきているということを強く感じました。

研究は良くも悪くも機械学習的な話が多かった

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自分が参加したセッションの偏りがあったからという気もしますが、とりあえずデータを機械学習に食わせて何か結果をだす、というような発表が多かったのが印象に残っています。データをいろいろな視点から扱ってみるという点では貢献があるかなと思う反面、機械学習系の研究の悪いところとしてでやすい「なぜこの手法を選んだのか」ということを論じきれていなかったり、「この結果は他の環境や実環境でも有用なのか」というようなことに対しての突っ込みが甘いものも少なくなかったように思います。

研究所から離れた自分が参加してみて

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私自身が今年の4月から研究所を離れて現場(SOC)に入っているのですが、やはり現場的視点を持ってからこういう研究発表を聞くと面白いと思いました。特にMWSというのは事前に配布されるマルウェア関連のデータがあるのですが、この共通のデータをいろいろな視点で料理している研究を見ると、実際の現場でも「ああ、こういう見方や分析をして見ると何か見えてくるかもしれない」というような着想を得ることができました。

すでに多くのセキュリティ対策ベンダだけでなく大手Webサービスの方などもちらほら参加されるなど、多様な方々が集まるよい場だったと思います。研究というキーワードがあるとちょっと疎遠になってしまいますが、普段セキュリティに関わっている方ならいろいろと有益だと思いますので、参加を検討してみるとよいと思いますよ。